カテゴリー
未分類

トルコ戦士

トルコリラ投資をする人々を世間ではトルコ戦士と呼ぶらしい。何を隠そう、私もその一人である。

2017年の夏であった。前年に親に勧められて購入した株が順調に利益を出していた私は、次の投資案件を探していた。とにかく資産を増やしたい、その一心で某証券会社の戸を叩いた。

対応してくれたのは、三木さんという美しい証券レディであった。「株の次は手堅い投資信託かな?」と相談した私に対して、彼女が提案したのはトルコリラ債券であった。見ると3年満期で驚異の金利9%の商品であった。

「トルコリラがこんなに下がっているのは未だかつてないんです」と泣きぼくろのある三木さんは言った。「逆張りすれば、今後上がる可能性は十分にあります」

それを聞いた瞬間、身体中の血が沸き立つのを感じた。これは一攫千金のチャンスかもしれない!と私は思った。しかも金利9%!利息だけでも相当の儲けになる。

上がる可能性があるということは、当然下がる可能性もあるのだが、当時の私にその発想はなかった。何より「逆張り」というプロっぽい用語に並々ならぬ魅力を感じた。

「戦え」と神の声が聞こえた気がした。こうして私は預金をかき集め100万円の一括投資をしたのであった。

イメージ画像:当時の気持ち

晴れてトルコ戦士になったのだが、待てど暮らせどトルコリラは上がらない。それどころか日に日に下がっていく。指を加えながらチャートを眺め続け一年。忘れもしない2018年の8月、トルコリラは急暴落する。購入時34円あったリラが、半分以下の16円になってしまったのだ。

慌てて三木さんに救済を求めようと電話をすると、彼女は不在であった。聞くと夏のバカンスでプーケットにいるらしい。

男は美人に弱いと聞くが、私も相当弱い。あの女にまんまと騙されたと思いながらも、思い出すのは彼女の美しい顔と泣きぼくろばかりだ。

回復の兆しも見えぬままトルコリラ債券は今年満期を迎える。私はこれを教訓とし、もう二度と危険な橋は渡らない。次は安全な豪ドルを買う予定だ。退職金も入った。

神よ、今こそ我に力を与えたまえ。

趣味のイラスト:2コマ漫画「玉砕」